三年一組学級会 ― 大人不信任決議案

「今からー、三年一組の学級会をはじめまーす」

 ガリベンの学級委員長、田口君が喋り、日直が号令をかけた。

 

「きりーつ」

「きょーつけー」

「…………れい!」

 

 号令と共に皆が立ち上がり、ガタガタとイスが悲鳴をあげる。獲物を取り囲むかのように四角く並べられた机。その中央には大人が数人、その身体とは不釣り合いな小さいイスに座らされていた。

「「よーろーしーくーおーねーがーいーしーまーすっ!」」

 

「ちゃくせき!」

 

「えー。今日の議題は、大人について、です」

 書記のヒロミちゃんがチョークを使って「ぎ題 大人について」と書いた。

 

「僕たちは大人達に苦しめられています。そう感じる時が多いです」

「…………」

 一瞬の沈黙が流れる。お調子者の田中くんがいきなり座席から飛び上がり、失笑が漏れる。ガリベンの田口君は気にせず話を続けます。

「僕のお母さんは、いつも僕が帰ってくるなり『宿題は!?』と聞いてきます。塾から帰ってきてからも『小テストはどうだったの!?』と聞いてきます」

「あーあるあるー」

「私も!」

 

「それに、大人は自分にはわからないことが起こった時、よく子どものせいにします」

「そーだ!」

「大人はズルイ!」

「置いてあったオヤツがなくなった時、ボクのせいにされたんだ!」

 食いしん坊の田中くんが叫んだ。

 

「テレビを見ていても、えらい大人たちはケンカしてばっかりです」

「ケンカばっかりしている大人を見て、僕たちはそんな大人になろうと思いますか?」

「思わないー!」

「少しは子どもをみならえー!」

 

 教室の中央では、クラス担任のバタコ先生や田口君のお母さん、それにテレビで見たことのある、偉そうな人が子ども達の様子を見ながらガタガタと震えている。 

「だから僕は、大人不信任決議案を提出したいと思います」

 

 一瞬の沈黙が流れる。お調子者の田中くんがまた飛び上がる。

 

「ナニソレ?」

「いみわかんないー」

 皆が首をかしげたため、田口君が慌てて説明した。慌てたせいで、普段の口調に戻っていた。

「この前、同じようなのをテレビで見たんだ。ようするに、大人不信任決議案を出された大人は、大人をやめなきゃいけないんだって」

 

「え、じゃあどうなるの?」

「子どもになるのかな」

「赤ちゃんかもよ?」

「おじいちゃんってこともあるかも」

 

 

「でも、このまま大人達に全てを任せていきたいとは思わないでしょう?」

「うん」

「そうだ」

「それは…………ヤダな」

 

「じゃあ、大人不信任決議案に賛成の人は手を挙げてください」

 パラパラと手が上がる。それぞれが顔を伺いながら、おそるおそる。大体、クラスの三分の一くらいが手を挙げた。

「じゃあ次。反対の人、手をあげてください」

 勢いよく手をあげたのは、お調子者の田中君だ。だが、それ以外に手はあがらなかった。

 

「じゃあ、大人不信任決議案は賛成多数、ということでいいですか?」

「いいでーす!」

 

チャイムが鳴る。学級会終了の合図だ。チャイムと同時に、日直が号令をかける。

 

「きりーつ」

「きょーつけー」

「…………れい!」

 

「「あーりーがーとーごーざーいーまーしーたっ!」」

 

 皆が立ち上がり、ガタガタとイスが悲鳴をあげる。獲物を取り囲むかのように四角く並べられた机。その中央には大人だった生き物が数匹、その身体とは不釣り合いな小さいイスに座らされている。その光景を見て、学校を休みがちだった林君は「結局、子どもも大人もやってることは変わらないんだよな」と独り言を呟いた。

 

 

どっとはらい