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うつ状態の人は「無理しないで」という言葉が「死んでいいよ」に聞こえるという話

うつ状態の人に、頑張れと言ってはいけない。何故なら、うつとは頑張りたくても頑張れない病気だから』

 

なんとなく、どこかで聞いたことのあるような言葉です。うつ関連の本を開けば、大抵このようなことが書かれています。けれど先日、うつ状態の「頑張りたくても頑張れない」という症状は、うつの一側面でしかないのだと思い知らされる出来事がありました。最近、とある知人(うつの診断を受けている)と会う機会があり少しお喋りをしたのですが、その時彼がこんなことを言っていました。

 

「よく人から『無理しないで』と言われるが、自分にとってその言葉は『死んでいいよ』と聞こえる」

どういうこと? と僕は尋ねました。

「だって、自分にとっては生きること自体が無理をしていることだから」

 

それは、かなり衝撃的な言葉でした。よく聞くような『うつ状態の人に、頑張れ、と言ってはいけない』なんてことは自分の頭に入っていても、『うつ状態の人に、無理しないで、と言ってはいけない』なんてことは、今まで考えもしていなかったからです。というか、僕も人に対して『あまり無理しないで』『ほどほどにね』と言ってきた人間です。うつ病に対する自分の認識の甘さが浮き彫りになると同時に、そういった話を聞き、うつ状態の別側面も浮かび上がってきました。

 

 

頑張ることをやめられない人達

何故、うつ状態の人達は頑張りたくても頑張れないのか。うつ病関連の本を幾つか漁ってみましたが『うつ病の人を励ましてはいけない』『どういう人がうつ病になりやすいのか』『うつ病を治すために』など、うつ病やうつ患者への対処法、という類の本が多く、うつ状態にある人の気持ちや心に寄り添うような本は見かけませんでした。勿論、著者自身がうつ状態だという本もありますが、うつ状態の人がその本を読んで「自分も同じ気持ちだ」と共感することはできても、それは寄り添うということではなく、最早そのものです。

 

この知人の話を聞いて浮かび上がってきたのは、この『頑張りたくても頑張れない』という状態は『頑張ることをやめられなかった』もしくは『頑張らざるを得なかった』結果による所が大きいのではないか、ということです。うつ状態の人にとっては「生きていくこと自体が頑張ること」であり、大変なことなのです。普通に呼吸ができ、普通に社会で生きていくことができ、それについてなんら疑問をもたない人にはイメージしにくいことかもしれません。というか、「生きることは当然のこと」と考えている人が多いからこそ、「頑張ること」に拍車がかかってしまうのだと思います。縋っている、という表現のほうが近しいのかもしれませんが……

 

 

勿論、だからと言って、うつ状態の人の気持ちを理解するために自分自身もうつ状態になる必要があるかというとそうではないですし、本人もそれを望んでいるわけではありません。ただ、普通に生きることができる人の「無自覚さ」が、誰かを苦しめているという「可能性」だけは、頭の片隅にでも入れておいて欲しいなと思うのです。

 

『頑張れ』でもなく『無理しないで』でもなく、『そうなんだ』とただ相槌を打つ。そういう在り方もあり得るな、と思った次第です。