マンガ書評『セルフ』 ~オナニー白書~

 始めに断っておきますが、僕は大真面目です。至って真面目に朔 ユキ蔵さんが描いた『セルフ』というオナニー漫画をレビューしようと思っています。あ、オナニー漫画といっても作者の自己満足漫画という意味のオナニー漫画ではなく、本当の意味でのオナニー漫画です。いうなれば、真剣オナニー漫画です。…………いや、本気で真面目ですからね?


 いやぁこの漫画、本当に面白いんですよ。出てくる女の子とかも可愛いし。是非皆さんに読んでもらいたいと思って、その一心でレビューを書いてみます。てなわけで小見出しはこちら。


 

・自己表現としてのオナニー

・自分自身と向き合う

・人生はオナニーだ

 

 

・自己表現としてのオナニー

  ざっくりとこの漫画のあらすじを書きますと、女運が強すぎて万年モテ期、生まれてこのかた性行為といえばセックスしか経験したことのないという青年が、ある出来事をきっかけにオナニーをすることを覚え、オナニーの素晴らしさに開眼し、その可能性を模索していくという漫画です。それだけ聞くと「憎たらしい」だの「男の敵」だの、男どもの怨念に満ちた声が聞こえてきそうな感じですが、当の主人公は至って真剣です。真摯にオナニーと向き合います。


 オナニーは元々、旧約聖書に出てくるオナンという人間が語源となっています。敬虔な読者である貴方達には敢えて説明する必要もないかもしれませんが、オナンは神の意に背く行為、つまり生殖としてのセックスを否定したために神によって処刑されてしまいます。オナニーという行為は神が与えたもうた、動物としての本能を否定しているというわけですね。そういえば横道に逸れますが、確か聖職者のオナニーも禁止されていたはずです。だから、夢精してしまうとサキュバスだのインキュバスの仕業だの言ってたり、言ってなかったり。


 でも、よく考えて下さい。確かにオナニーは生殖行為ではありません。けれど、そうした一見無意味な行為こそ、実は大切なものだったりすることはないでしょうか。性行為は子孫を残す生物としての本能です。しかし、それだけでは動物と大差ありません。本能を否定するということは、即ち動物としての「ヒト」ではなく、理性をもつ「ひと」として自分自身を本能という鎖から解き放つ、誇り高い行為ではないかと僕は思うのです。オナニーがね。


 話を元に戻しますが、この主人公、いつも女性から求められるがままに性行為に臨んでいまして、超なすがまま。超受動的です。だからこそ冷めた視点で女性達を眺め、半ば悲観的に「人間はみな性器の奴隷だ」なんてことを言ったりします。動物としての本能に逆らえない女性達、女性達になすがままの主人公。そんな彼がオナニーを通して、次第に性器の奴隷ではなくなっていくのです。そうして獲得したもの、それは自己表現としてのオナニーだったのではないでしょうか。

 
・自分自身と向き合う

 

 ペニスには様々な呼び名があります。ペニス、ちんちん、おちんちん、ちんこ、ちんぽ、おちんぽ、怒張、男根、肉棒、息子、男性などなど…………まぁ、活用の種類が気になるのなら、フランス書院文庫でも読めばいいと思いますよ。それより、こんな単語を書くたびに予測変換がカオスになっていくのが切ないです。それはさておき、その活用の中に一つ、自分自身という言葉があるのを発見し、僕は驚きました。だってそうでしょう? 僕のペニスが僕自身だったら、僕に挨拶した全ての人間は、僕の股間にも挨拶しているわけです。逆に、僕自身がペニスだとしたら、俺のペニスが他人の悩み事を聞いてる時だってあるわけです。そんな無茶苦茶な。

 
 でも、よくよく考えてみると、オナニーをする時間はいつも孤独です。賢者タイムなんて言葉もありますが、オナニーをしている時間とは、自分自身(股間)を通して自分自身(心)と向き合っている時間なのではないでしょうか。いわば瞑想状態のような。


 なにバカなこと言ってるんだよ、とか嘲笑混じりに言ってくる人もいるでしょう。そういう人は、まだ多分動物としてオナニーから離れられていないのではないでしょうか。そういった動物的な思考から脱却し、自分を高めるためのオナニーライフを送って頂くためにも、是非この「セルフ」を読んでみませんか? 最後に、この漫画内で印象に残った言葉を記し、このレビューを終わらせたいと思います。


 

「人生はオナニーだ。摩擦が起こるほどキモチいい」

 

 

セルフ 1 (ビッグコミックス)

セルフ 1 (ビッグコミックス)

 

 ただ一つ勘違いして欲しくないのが、この本がオナニーを通して人間を掘り下げる本ではなく、あくまでオナニーを掘り下げる本だということです。そこを勘違いしながら読むと、このセルフという漫画の魅力は少し減ってしまうと思います。あ、ついでに言うとこの漫画の作者さんは女性です。